なかなか面白い小説でしたよ!
踊るドン・キホーテ |
ドン・キホーテ前半に関する感想はこちらから。
セルバンテス 「ドン・キホーテ」前編を読了
さて、後編のドン・キホーテでは、三度目の旅の出発から始まります。
ここで面白いのは、前編での出来事はすでに出版されているという前提で始まります。なんでも
「ポルトガル、バルセロナ、バレンシアで一万二千部も印刷されており、アントワープでも印刷中」
とのこと。現実的にはあり得ないでしょうが、そういう前提で物語が進んでいきます。
後編で面白かったことをまとめると、主に以下の3点です。
その1 周囲の人は意外と狂人キホーテを楽しんでいる。
すでに前編の物語が出版されているので、彼のいく先には彼の冒険を本で読んだことがある人がたくさんいます。そういった人たちは喜んで彼の狂気につきあっています。
例えば途中で会った公爵は大小さまざまな芝居を打って、キホーテの反応を楽しんでいます。
なんと一時的とは言え、従士サンチョ・パンサを島の領主に仕立て上げたりしました。(島だったのかはあやしいですが・・。)
その2 ドン・キホーテが意外とまとも。
騎士道物語を読みすぎて自分も騎士だと思い込んでいるキホーテですが、騎士道に関すること以外は、至極まっとうな受け答えをします。会話は理論整然としており、博識でもあります。
彼の正気と狂気の入り混じった会話・行動に周囲の人たちは驚いたり戸惑ったりしています。
狂気の中に見る正気というのも、面白いですね。
その3 従士 サンチョ・パンサが意外と賢い
狂人ドン・キホーテの従士となって一緒に旅をしているパンサですが、彼も意外とまともです。
公爵の芝居とはいえ島の領主になった彼は、住民の訴えにテキパキと的確な対応をしていきます。
また、ご主人のドン・キホーテに対しても的を得たアドバイスをしたりします。
そもそもドン・キホーテが狂ってることを彼は理解しています。
なのになぜ一緒に旅をしているんだか・・。
全編を通して感じたこと
人生には部分的に狂気な部分があったほうが面白いのではないか?
また、他人の狂気を楽しむ度量の広さを持ち合わせているか?
狂気とまでは言わないでも、ちょっと人と外れた行動をとったほうが人生は面白いんじゃないか、と思いました。
ドン・キホーテも、最初は迷惑ばかりかける人というイメージでしたが、彼の言動が世に知られたことにより、彼の狂気を喜び楽しむ人も出てきました。
もし彼が正気のまま下級貴族として一生を終えていたら、彼が周囲の人に与えた楽しみはなかったでしょう。
また周囲の人も、ただドン・キホーテを「狂ってる」という人よりも、それにうまく付き合って楽しんだ人のほうが愉快な人生だっただろうと思います。
例えば北九州の仮面ライダー。
彼は飲酒運転撲滅を訴えるために仮面ライダーの格好をして走っているそうです。
仮面ライダーの格好で走ることと飲酒運転撲滅がどうつながるのか、ちょっとわかりません。
でも「アホらしい」と言えばそれまでかもしれませんが、彼の行動とうまく付き合って飲酒運転を減らす活動をしたほうが楽しいに決まってます。
彼は、現代の私たちの度量の広さを試しに来た現代のドン・キホーテかもしれません。
(言い過ぎ?)
あと、本の内容とは逸れますが、翻訳の品質が素晴らしいと思いました。騎士のドン・キホーテの発言はサムライ口調になっていますし、本来は農夫のサンチョパンサは農夫らしい口調になっています。
ウケたのはドン・キホーテがサンチョ・パンサに対して「この田吾作め!」と怒鳴ったところ。
スペインの話なのに田吾作・・(笑)。
ちなみに翻訳者は牛島信明氏です。
というわけで、セルバンテス「ドン・キホーテ」、なかなかおススメですよ!
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